芋煮で年を越しませんか

2016年12月31日。YYプロジェクトのメンバーは「ナガシマカウントダウン&ニューイヤーズパーティ2017」に華をそえるため、現地スタッフの方々と一緒に3000食分(!)の芋煮をつくっていた。
写真に写っているのが直径3メートルの大鍋。この鍋は通称五徳と呼ばれる加熱用のカマドと組み合わせると2メートル以上の高さになってしまうので、調理用の足場が欠かせない。

もう1枚の写真はその足場上からのアングル。うっかりすると飲み込まれそうな迫力である。ちなみにこの大型ひしゃくはステンレス製の特注品で、具材をすくうとけっこう重い。
当時YYプロジェクトに入りたての私は、遠方出張どころか3メートル鍋の芋煮も初体験。大鍋を積んだ10tユニック車の搬入からはじまり、前述の五徳や足場の組立ては食のイベントのためというより建設現場のような雰囲気。そして、大量の食材と特注ひしゃくを駆使して作られるのは3000人分の芋煮…と、見るもの全てに圧倒されていた。

大鍋での調理は常に数人がかりの大がかりなもの。また特注ひしゃくは大きすぎて盛り付けに不向きのため、一旦芋煮を小鍋にうつして別のお玉で盛り付けしなければならない。ドッと押し寄せてくるお客さんに対応するためにはけっこう人手が必要になってくる。というわけで、鍋周りで動く人員は私たちと現地スタッフの方を合わせて15人超えの大所帯となる。これがまた賑やかで、私としては関西系のライトなノリ(?)のスタッフさんとの共同作業は新鮮で楽しく、山形弁と関西弁が飛び交うハードながらも濃い時間はあっという間に過ぎていった。
そして、芋煮がなくなりいよいよ年も明ける頃、「happy new year!」の掛け声と同時に花火が打ち上げられ会場は大盛り上がり。その一方、会場片隅で小鍋をせっせと洗っていた私は、歓声を遠まきに聞きながらふと冷静になり「自分は一体何をやっているんだろう…」と、ちょっとせつない気持ちになっていたのも…良い思い出である。
大鍋のプロフェッショナル

大鍋調理のポイントは何といっても大人数分を短時間で一気に調理できるところにある。※ちなみに3メートル鍋は過去1万食分を調理した実績がある。とはいえ規格外の大きさゆえに、その運用には高い技術が求められる。ここで、YYプロジェクトのベテランであり、大鍋の保管・運搬を担っている吉田重機運輸株式会社の吉田社長に大鍋運用にまつわる話をいくつか聞いてみる。

Q.1 このユニック車は普段何を運んでいるんですか?
「建設現場で使われる重機や建築資材を運んでいます。鍋じゃありません(笑)。範囲としては山形県内がメインですけど案件によっては、県外や関東県に行くこともありますね。」
Q.2 通常業務と出張大鍋の共通点は?
「あまり意識したことはないですけど、判断力というか現場を読む力は求められると思います。指定された時間に、手際よく、安全に設置する…これは基本です。それと同じ現場はふたつとない、という点も共通しています。」
Q.3 常に心がけていることはありますか?
「何の仕事でもあてはまると思うんですけど段取り八分。あとは状況やお客さんの要望に合わせて場面場面でどう対応できるか、そのためにはやはり段取りなど万全の準備があってこそですね。
一つのイベントでも携わっている業者さんは沢山います。テント屋さんもいれば電気工事屋さん等もいて、特に自分らは大型トラックで会場に入るので搬入経路や道幅、設営スケジュールまで細やかに確認した上で現場に臨んでいます。」
あなたの街に大鍋がやってくる

最後に、出張大鍋のもうひとつの顔である「ご当地鍋」にもふれてみたい。YYプロジェクトに寄せられる出張依頼は芋煮以外にも「お祭りで地元料理を大鍋で振る舞いたい。」というリクエストもけっこう多く、その場合は調理等は現地の方にお任せして、私たちは火元の管理や調理補助など裏方に徹することになる。
気仙沼市のメカジキ鍋

会津若松市の鮭鍋

福島市のサンマつみれ汁

これらは2メートル鍋で1000食分を調理。現場では地元の方と一緒に調理にあたるわけだが、特に気仙沼が印象強く、漁業連のおばちゃん達の威勢と手際の良さはさすが港町といった感じがあって思い出深い。ちなみにいずれの鍋も配食前からお客さんが長蛇の列をなしていて、あっという間に鍋がカラになるほど大盛況であった。
大本山建長寺のけんちん汁


こちらはけんちん汁発祥の地である鎌倉の建長寺でお坊さん達と一緒に作った時のもの。写真では少しわかりにくいかもしれないがこの鍋は直径2.3メートル。私たちは見慣れてしまったのか感覚がマヒ気味ではあるが、やはりお客さんの視点からすると大鍋のインパクトは大きいようで、どの出張でも写真を撮ってくれる方が後を絶たない。
そういえば、コロナ禍の出張時にこんな声をかけられることが多かった。「自分からは遠くに行けないけど、こうして近くまで来てもらえるのは本当にありがたい。」この言葉はとても身に沁みた。今となっては、いまいましいコロナ禍もだいぶ現実感がうすれてしまっているが、ある意味では出張の原点だと思う。これからも大切にしたいと思っている言葉である。
…大晦日に三重で芋煮をつくる。しかも3メートルの大鍋で。そんな冗談のような話からはじまった今回のレポート。個人的に印象深い話をいくつか掲載させてもらいましたが、実は紹介したい実例は他にもたくさんありまして、だいぶ割愛しました。また、新しい問い合わせもいくつかいただいているので、機会があればこうして報告できたら幸いです。
