白い、孤島のようなシルエットが畑の隅にぽつんと佇んでいる。冬の名残りのような雪。今日は4月12日(日)、世間的には春なのに山あいの風は強く冷たい。ちょっと納得した。ここは尾花沢。山形県内でも有数の豪雪地であり、一方でスイカの名産地でもある。

昔はこんなに暑くなかったような…
最近「田中さんってスイカ農家になったんですね!」と言われることが多くなった。なぜ断定する…と思いながらしかしそう言われる原因を作っているのは私自身なのでまぁ仕方がない。趣味的に更新しているインスタで、カミさんの実家のスイカ畑の景色や作業風景をよくリールで上げてるし、今年も頑張ります!なんて答えるものだから噂に拍車が掛かるのも無理はない。別にいいやと思う。それよりも妙に意気込んでいる自分がいる。
今年は今まで以上に畑に行きたいと思っていた。尾花沢スイカを名産品たらしめているもの、その根拠の一つに尾花沢特有の寒暖差がある。しかし昨年は暑過ぎた。
4月の定植(苗植える)から足掛け数ヶ月…いよいよ収穫!という時期に全く雨が降らず、酷暑日が続いたため、結果的に近年にない程の不作となってしまったのだ。廃棄されるおびただしい数のスイカを見て忸怩たるものがあったし、何よりもカミさんと親御さんの心持ちはいかばかりか…しかも年々夏の暑さは過酷さを増しているということで、だったら少しでも皆の負担を減らすことができたら!といった所存なのです。


意気込みと体が一致したらいいのに
そんな訳で畑作業の初日を迎えたわけだが早くも不安に駆られている。まずは冬の名残を感じながら枯葉掃除。二つある畑のうち一つは雑木林が隣接していることもあってか、枯葉が畑の端に吹き溜まりのように集中している。その後、列ごとに支柱を立てたり金具をセットしたりと作業は続く。中腰で手を動かし、立ったり座ったりを繰り返すその作業は足腰にくる。それにちょっと寒い。
もう一つの畑は、近くに水田も多く広がる平野地帯なので風はそれほど強くないが、やはり中腰作業が堪える。朝の8時からお昼休憩を挟んで16時までの7時間。その間、歩数は1万歩を超えていた。



翌週、4月19日(日)は緊張の定植。なにが緊張するってあなどるなかれ。苗を植える位置は支柱の中心に、ビニールから約30㎝。そして深さは苗の葉が肥料に埋まらないようにやや浅めとチェック項目が多い。私はまごついた。どれか一つに気を取られると何かが疎かになってしまう。そして悩めば悩めむほど時間が掛かり作業が押す。だがここに尾花沢スイカを名産品たらしめるもう一つの理由がある。手間をかけること。一見地味で僅かな違いの積み重ねが品質の差に繋がっていく。私は後々、工程が進んでいく度にそれを実感することになるのだが…それはまだ少し先のことである。
とにかく定植!作業の傍ら背後からチェックが入るのでなかなか緊張する。「右にズレてる」「端っこに寄り過ぎ?」「もっと苗を浅く!」…ここは焦らずコツコツやるしかない。ひとしきり定植を終えると今度はキャップを被せが待っていた。苗の保護と保温のために紙製の白いキャップを広げ、爪楊枝で2カ所ずつ止めてく。
緊張作業と普段の運動不足が祟ったのか午前中にして心身ともに削られた私は昼食の後、爆睡した。ちなみにこの日の午後はあまりの強風のため作業は延期。その知らせにちょっとホッとしてしまう自分がいた。あの意気込みは何処へ…先はまだまだ長い。

一週間あけて4月26日(日)。この日も引き続き定植とキャップかけ。うむ、微々たるものでも回数をこなせばそれなりに上達していくようで、作業スピード・正確性ともにちょっとした向上を感じる。やればできるじゃないか。と勢いのまま午後の作業に向かいたかったが、またしても強風により延期。残念ではあるが、やはり少しホッとしている自分がいる。作業中の疲労を和らげる対策を立てなければと思った私は、帰りの道すがらワークマンによって中敷を買った。