山形の団体 2024.07.30

山形から全国へ!

出張大鍋プロジェクト

2016年の大晦日、場所は三重県。私は出張大鍋プロジェクト(以下YYプロジェクト)のメンバーとして、三重県はナガシマスパーランドへ芋煮を作りに来ていました。山形県より車で10時間超の長旅を経て、3メートルの大鍋で煮炊きする3000人分(!)の芋煮。その規模感、スケールとは対照的に何故かひっそりと活動を続けているこの出張芋煮もとい出張大鍋の様子を、現場レポートとして私のちょっとした思い出を添えてお送りします。

INFORMATION
Y・Y PROJECT
Y・Y PROJECT

山形商工会議所青年部の外郭団体として2006年に発足。「日本一の芋煮会フェスティバル」の広報活動を軸に、様々な地域とコラボレーションも積極的に推進している。

 

Web : http://www.y-yeg.jp/yy-project/index.php

Instagram:https://www.instagram.com/yyp_2006/?hl=ja

3000人分の年越し芋煮

2016年12月31日。YYプロジェクトのメンバーはナガシマスパーランドで毎年開催される「ナガシマカウントダウン&ニューイヤーズパーティ」に華をそえるため、現地スタッフの方々と一緒に芋煮をつくっていた。

写真に写っているのが直径3メートルの大鍋。この鍋で作る芋煮はその大きさゆえ足場の上からでないと作業できない。通称「五徳」と呼ばれる加熱用のカマドと鍋を組み合わせると2メートル以上の高さとなり、とてもじゃないが人の手が届かないのである。

もう1枚の写真はその足場の上からのアングル。うっかりすると飲み込まれそうな迫力!ちなみにこの大型ひしゃくはステンレス製の特注品で、芋煮を掬う時は具材やスープのボリュームの相まってけっこう重い。

当時(2016年)YYプロジェクトに入りたての私は、遠方の出張芋煮どころか3メートル鍋を使った芋煮も初体験だった。大鍋を積んだ10tユニック車の搬入からはじまり、前述の五徳や足場の組立ては食のイベントというより建設現場のような雰囲気で、しかも大量の食材に特注ひしゃくを駆使して作られるのは3000人分の芋煮…と、見るもの触れるもの全てに圧倒されていた。

3メートル大鍋での調理はとにかく大がかりなもの。鍋洗いから始まり食材投入、調理は常に数人がかり。また特注ひしゃくはその大きさゆえカップに盛り付けるのは至難の業。なので一旦を小鍋に芋煮をうつしてから、家庭サイズのお玉で改めて盛り付けしなければならない。

そして当然のことながら大鍋のインパクトは会場内でも一際目立つ。ドッと押し寄せてくるお客さんに対応するためには私たちYYプロジェクトメンバーだけでは全くの人手不足。なので鍋周りには私たちとナガシマスパーランドの現地スタッフの方々、総勢15人超えの大所帯となる。20時の配食開始から芋煮が無くなるまで正味3時間、関西系のライトなノリ(?)のスタッフさんとの共同作業は新鮮で楽しく、山形弁と関西弁が飛び交うハードながらも濃い時間はあっという間に過ぎていった。

芋煮がなくなりいよいよ年も明ける頃、「happy new year!」の掛け声と同時に花火が打ち上げられ会場は大盛り上がり。その一方で私は会場片隅で小鍋をせっせと洗っていた。新しい年を祝う歓声を遠まきに聞きながらふと冷静「自分は一体何をやっているんだろう…」と、ちょっとせつない気持ちになっていたのも良い思い出です。

大鍋プロフェッショナル

大鍋調理のポイントは何といっても大人数分を短時間で一気に調理できるところにある。※ちなみに3メートル鍋は3000食〜8000食の調理が可能。とはいえ規格外の大きさゆえに、その運用には高い技術が求められる。ここで、YYプロジェクトのベテランであり、大鍋の保管・運搬を担っている吉田重機運輸株式会社の吉田社長に大鍋運用にまつわる話をいくつか聞いてみる。

Q.1 このユニック車は普段何を運んでいるんですか?

「建設現場で使われる重機や建築資材を運んでいます。鍋じゃありません(笑)。範囲としては山形県内がメインですけど案件によっては、県外や関東圏に行くこともありますね。」

Q.2 通常業務と出張大鍋の共通点は?

「あまり意識したことはないですけど、判断力というか現場を読む力は求められると思います。指定された時間に、手際よく、安全に設置する…これは基本です。それと同じ現場はふたつとない。という点も共通しています。」

Q.3 常に心がけていることはありますか?

「何の仕事でもあてはまると思うんですけど段取り八分。実際の現場に臨むまでにどれだけ不確定要素を減らせるか。なので打ち合わせやシミュレーションは入念にさせてもらっています。あとは状況やお客さんの要望に合わせて場面場面でどう対応できるか、そのためにはやはり段取り含め万全の準備があってこそですね。

イベントひとつと言ってもそこに携わる業者さんは少なくありません。テント屋さんや電気工事屋さん、音響スタッフさん等が集中するので設営撤去は人やトラックが入り乱れています。特に自分らは大型トラックで会場に入るので搬入経路や道幅、イベント中のスケジュールまで細やかに確認した上で現場に臨んでいます。」

あなたの街に大鍋がやってくる

最後に、出張大鍋のもうひとつの顔「ご当地鍋」にもふれてみたい。YYプロジェクトに寄せられる出張依頼は芋煮以外にも「お祭りや会社行事で地元料理を大勢に振る舞いたい。」というリクエストも多く、その場合は調理等は現地の方にお任せして、私たちは火元の管理や調理補助など裏方に徹することになる。

気仙沼市のメカジキ鍋

会津若松市の鮭鍋

福島市のサンマつみれ汁

これらは2メートル鍋で1000食分を調理。現場では地元の方と一緒に調理にあたるわけだが、個人的には気仙沼のメカジキ鍋は印象強い。漁業連のマダム達の威勢と手際の良さはさすが港町!といった感じがあって山形内陸の盆地育ちとしては大変新鮮な光景だった。ちなみにいずれの鍋も配食前からお客さんが長蛇の列をなしていて、あっという間に鍋がカラになるほど大盛況であった。

大本山建長寺のけんちん汁

こちらはけんちん汁発祥の地とされる鎌倉・建長寺でお坊さん達と一緒に作った時のもの。写真では少しわかりにくいかもしれないがこの鍋は直径2.3メートル。

私たちは見慣れてしまって感覚がちょっと麻痺気味ではあるが、初見のお客さんの視点からするとやはり大鍋のスケール感やインパクトはかなりのものらしく、どの出張でも写真を撮ってくれる方が後を絶たない。

さすがにコロナ禍は出張依頼が一気に激減したけれど、そういえばこんな声をかけられることを思い出した。「自分からは遠くに行けないけど、こうして近くまで来てもらえるのは本当にありがたい。」そう言われ「呼んでもらってこちらこそありがとうございます!」と返した私だったが、この時もらった言葉は身に沁みて忘れることができない。今となってはコロナ禍もだいぶ現実感がうすれてしまっているが、ある意味では出張の原点たる言葉ではないかと思う。

…大晦日に三重県で3000食の芋煮をつくる。しかも3メートルの大鍋で。そんな冗談のような話からはじまった今回のレポートと個人的に印象深い話をいくつか掲載させてもらいましたが、実は紹介したい実例は他にもたくさんありまして、諸事情によってだいぶ割愛しました。また新しい問い合わせもいくつかいただいているので、機会があればこうして報告できたら幸いです。